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介護施設におけるHACCP導入について

食品衛生法の改正により、2020年6月からHACCP(ハサップ)導入が義務づけされました。飲食店等の販売営業のみならず、介護施設やデイサービスなどで食事を提供する場合も含む、「食品を取り扱う事業者全て」がその対象となっています。介護施設の利用者様は一般の消費者と違い抵抗力の弱い高齢者だからこそ、HACCPの導入による食中毒の予防や、より衛生的な管理の実現が求められます。

ここでは、そもそもHACCPとは何か、義務化とはどういうことで介護施設では何をすればよいのか詳しくご説明します。

HACCPとは?

 

HACCPとは国際的な衛生管理手法のことで、食中毒菌など健康被害を起こす原因(Hazard)が混入するリスクを、作業工程の分析(Analysis)により見つけ出し管理・記録する手法のことです。「危害分析」を指すHazard、Analysisと、「重要管理点」を指すCritical、Control、Pointの頭文字を組み合わせて「HACCP」と呼びます。

元々は宇宙食の安全を守るために宇宙開発時代のアメリカで誕生したHACCPですが、今では食品衛生管理手法の国際的な基準となっており、各国でHACCPの導入義務化が進んでいます。

介護施設のHACCAP(ハサップ)導入 義務化について

HACCAP導入義務化の背景として、高齢者人口の増加に伴い介護施設が増加している、言われていることが挙げられます。

2017年の厚生労働省介護施設事業所調査によると、前年である2016年から介護老人福祉施設186施設・介護老人保健施設81施設・グループホーム277施設・介護付有料老人ホーム152施設が増加しています。また訪問介護事業所等も増加しており、サービス付高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームも増えていると考えられます。高齢者施設では、誤嚥などによる食事時の介護事故や、提供した食事による集団食中毒が大きな社会的問題となっていることもあり、HACCPの義務化が進むこととなりました。

しかし実態として、嚥下咀嚼障害や誤嚥性肺炎、腎臓病や糖尿病など様々な疾患を患った利用者様に対して、ほとんどの介護施設では管理栄養士・栄養士を中心とした非常に少人数のスタッフで、疾患に合わせた食事の発注や調理・盛付け・配膳を行っています。社会背景もあり介護施設は食の安全と質、人材の確保の両立が求められる時代となりましたが、HACCPの導入により今まで以上に人材の確保や記録管理の負担が必要となることが懸念されています。

介護施設がHACCPを導入するメリット

食中毒が発生した際、一番被害を受けやすいのは、抵抗力が弱い高齢者や子供です。介護施設の場合、食事をするのはその高齢者が対象ですので、特に慎重な衛生管理が必要となります。介護施設において食中毒が発生すると、命の危険が生じる可能性が高いからです。

とはいえほとんどの介護施設では調理や配食といった食事に関わる作業に、日頃から注意を払い取り組まれているかと思います。そのうえでHACCPを導入したことにより得られるメリットは、イメージしにくいといった声も少なくありません。介護施設がHACCP導入には、衛生管理の「実践」のみではなく、その「記録」や「管理」の面で大きなメリットがあります。

衛生管理の見直しは常々されているか、新しいスタッフが入った際にしっかりと引継ぎが出来ているかなど、当たり前と思ってやっていても人間が行う作業ですので抜け漏れはどうしても発生します。こういった実態に対し、HACCPの導入により、諸作業をいつどのように行うか、問題があった際の対処法などを「衛生管理計画」として策定し実行することで、衛生管理の可視化が可能です。

また、HACCP導入によるメリットは介護施設側のみにあるわけではありません。衛生管理が可視化できていることは、利用者様やその家族の安心感にもつながります。

HACCPを導入するには

国際基準に沿った手法のもと、日常の食事作りを行う

HACCPとは、食品衛生管理の手法の国際基準です。最終製品のみを検査し安全性を確認する、という従来の衛生管理とは異なり、食材の搬入時や調理中、配膳時などあらゆるタイミングで、食中毒菌の汚染や異物混入などのリスクがないかを確認し、リスクを軽減・除去することで食品の安全性を確保していく手法です。

中国地方の介護施設においても2020年6月から「HACCPに沿った衛生管理」が義務付けられることになりました。HACCPに沿った衛生管理を行っているかどうかの認可や調査などを受ける必要はありませんが、これを守らなかった場合の罰則等は都道府県ごとに定められています。

不明点がある場合は、施設を管轄する保健所に確認しましょう。

衛生管理計画を策定し、計画を実施しできているかを確認・記録する

すべての介護施設に義務付けられた主なことは、衛生管理をいつ・どのように行い、問題があったときにどのような対処をするのかを「衛生管理計画」として策定し、計画に沿って実施すること、また計画に沿っているかどうかを確認・記録することです。

ここで言う衛生管理は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)や2S(洗浄・殺菌)の実施と、検食を実施するといった一般衛生管理など、従来行っていた内容が基本ですので、特別な機器を使って行う必要はありません。なお、「HACCPに沿った衛生管理」は、施設の規模によって実施する内容が異なります。従業員数が50人以上の場合は「HACCPに基づく衛生管理」、それ以下の場合は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」となります。都道府県などによって従業員数などの適用が異なることもありますので、確認してみましょう。

2つのパターンでは、それぞれ下記を求められます。・HACCPに基づく衛生管理:HACCP7原則に基づき、使用する原材料や製造方法等に応じて衛生管理計画を作成する。・HACCPの考え方を取り入れた衛生管理:各業界団体が作成する手引書を参考に、衛生管理計画を作成する。介護施設の場合、参考になる手引書は「HACCP導入のための手引書」のなかの「大量調理施設編」となります。

また、「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿って衛生管理を実施している場合、このマニュアル自体がHACCPに基づいて策定されているので、新たな対応をとる必要はありません。

危害要因の分析と、重要管理点の監視・記録

HACCPでは食中毒菌や石、金属片といった異物など、健康に悪影響をもたらすものを「危害要因」と呼び、危害要因を取り除くための重要なポイントを「重要管理点」としています。

この危害要因に何があるのか、重要管理点はどこかを衛生管理計画に盛り込みます。つまり食事を作り、利用者に提供するまでの工程のどこに危害要因があるのかを分析し、危害要因が発生しないようにするためには何を注意すればいいのかを予測し、重要管理点の継続的な監視・記録が必要です。

衛生管理計画の中では、食材の加熱の時間や温度を監視・記録するなど、工程ごとにさまざまな対応をとっていきます。たとえば、まな板、包丁などは食材ごとに使い分け、作業ごとに手洗いをする、などです。この時、危害要因はまな板などに付着した食材に付着した細菌類で、重要管理点は食材を処理し終わったタイミングが想定されます。また汚染源となる可能性は従業員にもあります。そのため、責任者は体調不良の概要や指示内容を記録するほか、体調不良者には調理作業に従事させないなど、体調不良者がいた場合の対策をあらかじめ用意することも効果的です。

危害要因は従業員の体調不良で、重要管理点は出勤時の体調チェックが想定されます。最も大切なのは、調理スタッフだけでなく、介護施設のスタッフ全員がHACCPについて理解しておくことです。もし外部の配食サービスを利用している場合は、委託先がHACCPに沿った衛生管理を実施しているかどうかを確認することも必要です。昨今では中国地方においてもHACCPに対応した「新調理システム」を導入している配食サービスが多いので、配食サービスを選ぶ際はその調理システムに着目するとよいでしょう。

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